インテル対ローマ、1-1。ヒーローとは何か

 「最悪の時に、最高のプレーをする」。MondoFutbolは、サネッティのセリエA最後にして重要なゴールについて振り返る。

 ミラノ発 -ジョーゼフ・キャンベルは、ヒーローとは「最悪の時期に、最善を尽くすことのできる人間である」と定義付けた。彼の言う通り、ヒーローとは、適切なタイミングで、運命を変えるために状況を乗り越えて偉業を成し遂げる人間であると考えられている。

 人生と同様に、フットボールでも全てに負けたと感じる時期がある。2008年の2月27日、ホームの試合でインテルはローマに先制点を許し、1-0で試合終盤を迎えていた。

 ローマ・デイフェンスを突破しようとするネラッズーリの試みはこれまでのところ阻止され、特にエルナン・クレスポのシュートはゴールポストやローマGKのドニに阻まれていた。

 イタリアのチャンピオンには刻一刻とシーズン初となる敗戦が迫っていた。ローマ戦の前に行われたサンプドリア戦では引き分けに終わり、ロベルト・マンチーニのインテルは、タイトル争いのライバルが4日間で勝点5を獲得し、まだ多くの試合数を残す中、首位との差を6ポイント差に縮める瞬間を目の前で見届ける危機に瀕していた。

 インテルは、チャンピオンズリーグでリバプールとの第一戦を引き分け、多くの故障者を抱えていた。この時期がインテルにとってシーズンを通して最も厳しい瞬間だったであろう。ローマ戦では、主要な選手(ワルター・サムエル、イバン・ラミロ・コルドバ、ズラタン・イブラヒモビッチ)全員を欠いている状態だった。インテルはこれまで滅多に勝点を取りこぼさず、どんな相手でも追い落としてきたが、このローマ戦ではリーグ不敗記録が破られる恐れがあった。

 インテルは交代枠を使い果たした後半の半ば、マクスウェルが負傷してしまい、10人での戦いを強いられた。(84分にローマのフィリップ・メクセスが2枚目のイエローカードで退場したことで、数的不利は解消された。)

 サン・シーロの誠実なファンは、ヒーローを探していた。物語の起承転結のように、彼は機が熟したときにだけ現れる。誰もが敗北を予感したときが最悪の瞬間だった。

 88分、ドニはクレスポの決定機を片手で防ぐ奇跡的なセーブを見せた。インテルはコーナーキックを獲得したが、ローマDFに弾かれる。インテルは素早くスローインをする。ボールは相手DFにクリアされ、ペナルティーエリア手前にこぼれたボールはサネッティに渡った。12年間と半シーズンで、セリエA通算11ゴールのインテルのキャプテンが、この難しい試合のマッチ・ウィナーになるとは予想されていなかった。しかし、その事実が彼のこの日のプレーを英雄的なものとする。

 ハビエルは2人の選手に挟まれながらも、ボールを数メートル前に運び、彼は右足を振りぬいた。全ての視線はボールに集中し、綺麗な弧を描いたシュートはドニの伸ばした腕をすり抜け、ゴール左隅に収まった。

 誰も予想していなかったヒーローになったサネッティは、喜びを爆発させながらピッチ中央に向かって走っていった。

 このゴールは、彼にとってセリエAで決めた最後に決めたゴールであり、重要なゴールであった。インテルはローマを相手に苦戦を強いられたが、最終的には多くの勝点を獲得し、いくつかの重要な瞬間を制し、リーグ優勝を達成している。

 2月のサン・シーロでの夜のように、普通だがユニークな人間が、最悪の時に、最高のプレーをすることを選ぶ。

アレッサンドロ・バイ

 

 

 

 

 


 English version  Versi Bahasa Indonesia  中文版  Versione Italiana 

読み込み中