[ミラノ] 昨日、母国ルーマニアからミラノへやってきたクリスティアン・キヴは松葉杖を妻のアデリーナさんに預けてサン・シーロのピッチに立ち、スタンドのファンとエリック・トヒル会長に最高の微笑みを見せながらお別れを告げた。
インテルの歴史に名を刻んだ偉大なカンピオーネは、今の心境を次の文章にまとめた。
「今の僕は、同時に幸せと悲しみを感じています。笑うと同時に泣いています。今味わっている充実感を言葉で表現することはできません。サッカーは僕に、いつまでも残るものを与えてくれました。情熱というものが何なのかを教えてくれて、勇気と献身の価値を教えてくれたのです。夢と現実を結ぶ架け橋になってくれたのです。僕は今、自分が何なのか、そして何をいかに得たのかを把握しています。ここにたどり着くまでの道のりは厳しい試練の連続でした。しかし、夢を諦めたことは1度もありません。運命が仕掛けるチャレンジに毎回立ち向かってきました。必ず勝利を手にすることができると信じて闘い続けたのです。自分の子供たちがハグで感謝を示してくれる日が来るだろうと信じながら、歩み続けてきたのです。それだけです」
「僕に良い教育を与えてくれた両親に感謝しています。24年前に僕がこの素晴らしい冒険を始めたのも、最高の手本であり、常にインスピレーションを与えてくれた男のおかげです。僕が17歳の時にこの世を去ったその男は、僕の父親でした。彼はコーチであり、親友であると同時に、誰よりも僕を厳しく批評する人だったのです」
「彼には誰よりも先にありがとうと言いたいです。キャリア中、常に彼がそばにいてくれるように感じました。僕はいつだって、彼みたいに威厳と勇気に満ちて、大望を抱きながら誠実であることを目指し続けました。彼に教えられた通り、有名人である以前にしっかりとした人間であることを意識しました」
「僕を成長させてくれた監督たちにも感謝しています。僕をデビューさせてくれた監督から、キャリア中に会って常にインスピレーションを与えてくれた指揮官たちにお礼を言いたいです」
「所属したすべてのクラブにも感謝しています。まず僕を信頼してくれたこと、そして様々な国と町で成長する機会を与えてくれたことに対し、ありがとうと言わせてください。おかげさまで、僕はより良い人間になることができました。すべてのチームのファンにも感謝しています。彼らの情熱とサポートがなかったら、勝利を手にすることなんてできなかったことでしょう」
「僕を暖かく支えてくれたメディカルスタッフ、ドクターやフィジオセラピストの皆さんに感謝しています。僕は故障の数が記録的だと思いますが、そんな僕を見捨てなかったことをありがたく思っています。インテルのチームドクターであり、友人であるフランコ・コンビ医師にありがとうと言わせてください。彼がいなかったら、僕は今ごろこの文章を書いていなかったでしょう」
「舞台裏で働く皆さんにも感謝しています。料理人や用具係の人からすべてのスタッフまで、彼らはサッカーチームの中で非常に重要な役割を持っているのです。選手たちのわがままを優しく受け入れてくれる彼らに、最大の敬意を込めてありがとうと言いたいです」
「キャリアを通して、数多くの選手に会ってきました。僕をリスペクトしてくれてありがとうと言うほか、彼らをチームメートとして数々の戦いを共にし、敗北の悔しさと勝利の歓喜を分かち合ったことを名誉に感じていると言いたいです。彼らとはいつまでも心の中で一緒ですが、ロッカールームの雰囲気が恋しくなるのは避けられません」
「そして、妻のアデリーナに感謝の意を表させてください。彼女は僕の傍にいるために自分の夢を犠牲にしたのです。母国から離れて暮らし、2人で苦況を乗り越えたのです。厳しい時に理解してくれて、支えてくれたのです。彼女は愛情とやすらぎ、そして素晴らしい家族を僕に与えてくれました。僕が辛い時、一瞬で苦しみを忘れさせてくれた娘のアナスタシアとナタリアに感謝しています。娘たちと妻の存在は、プロとしてのどんな偉大な成果より大きな価値を持つものです」
「僕がサッカーの世界に入った時は、夢と大望を抱えた少年でした。所属したチームに常に尽くして全力を出し切った後、僕は白髪と傷跡が多いですが、心は昔と変わらずに純粋だと感じています。お父さん、あなたがあなたの息子の人生の歩みに満足してくれていることが願いです。これはひとつの旅の終わりであり、僕の次の人生の始まりなのです」