マッシモ・モラッティ、“SKY”独占ロングインタビュー

クリスマスイブに放送された番組“I Signori del Calcio”から、名誉会長の発言をどうぞ

[ミラノ] 先日収録のマッシモ・モラッティ名誉会長ロングインタビューがクリスマスイブに、“Sky Sport 1”のサッカー番組“I Signori del Calcio”の一環として放送された。聞き手のジョルジョ・ポラーの質問に答えての名誉会長の発言の数々をどうぞ。

インテルは何も変わっていないように思えますが、実際はいろいろなことが起こったわけです。この変革を迎えてホッとしていますか? それとも不安感がありますか?

「まだ自分の感情を整理していない状態です。ただ、これだけ長い期間の末にクラブを手放したのは正しいことだったと思っています。周囲も、これで一安心しているのではないでしょうか。トヒル氏はちょっぴり圧倒されている部分もあるみたいですよ。雰囲気は気に入っているみたいですが、これまでは離れて見ていた身として初めて、常に注目の的であることが大変だということに気が付いたのです。これからの私は、単に一ファンとしてスタジアムに足を運んで応援を楽しむつもりですよ。試合が始まると自分の立場というのを忘れてしまうものです。私が会長に相応しくない態度を見せているところをテレビカメラに収められることが何度もありましたが、試合観戦というのは情熱を込められるから良いわけです。試合の最初から最後まで黙っているのは、恐怖で固まってしまっている時ですよ。たまには、感情を発散させるのも良いですよね」

あなたの父親アンジェロ・モラッティは、会長の第一の義務は人々に幸福感を与えることだと言っていました。 自分はこの任務を果たせたと思っていますか?

「インテリスタは特別なファンですからね。注意深く物事をチェックするファンで、ちょっぴり会長の気分、ちょっぴり監督の気分になっている、ちょっぴりスノッブな人たちなのです。だからこそ、インテルの会長を務めるのは素晴らしいことなのですよ。決して簡単に有頂天になったり、とんでもなく落ち込んだりすることのない、厳しくて、特別で、感謝を知るファンたちがいますからね。私の父は非常に寛大な人で、このチームを成長させたいという気持ちでインテルのオーナーになったのです。このチームを偉大にしていくことを重要に感じたのですね。私も同じようなことになったわけですが、他人が喜ぶから自分も嬉しくなるというのは甘いと思われるかも知れないものの、生きがいにもなるし素晴らしいことだと思いますね」

著名ジャーナリストのミケーレ・セーラは以前、あなたの下でインテルが勝てるようになるまでのインテリスタは、まるで不運の結果を味わって楽しんでいるみたいなものだったという記事を書きました。 マッシモ・モラッティ会長の功績のひとつは、こういったイメージをかき消したことなのでしょうか?

「クラブの特徴みたいなものでしたからね。先ほどのスノッブの話ですが、インテルファンは自分自身を特別だと思い、他人より優れている、他人より苦しみに耐えられると思い込む傾向があったのです。それはそれで良かったのですが、それを越えるのも良いことだと思いましてね。幸いにも、乗り越えることができました」

マッシモ・モラッティはどういう形でアンジェロ・モラッティの後を継いだと言えるのでしょうか?

「父はインテルのことに携わる時、どんな状況でも子供たちの我々を同行させていたのです。どんなにデリケートな会談の時もね。その経験のおかげで、私はクラブ経営に関して様々なことを学びました。しかしその後、広報活動や選手管理にしても、代理人の存在にしても、周りの世界が大きく変化したのです。悪くなったというわけではないにしろ、複雑になりましたね。私はその都度そういったことに順応してきたわけですが、何もかも支配しようという意味ではなくて、すべてを楽しんでやろうとしたのです。任された仕事が恵まれたものだと感じてね。父は本当に素晴らしい人だったので比較はできないですよ。もちろん、DNAが共通で共通の情熱を持っていることは事実ですが」

アンジェロ・モラッティ会長とエレ―ニオ・エレーラ監督の関係と、マッシモ・モラッティ会長とジョゼ・モウリーニョ監督の関係に共通点はあるのでしょうか? お父さんがスタメンを決めてエレーラに強制することもあったというのは本当ですか?

「2、3回そういうことがありました。自分は監督ではないということを感じながら嫌々やっていたのですが、流れを変える意味で何回かやったことがあります。私にも同じようなことがありましたが、父がそれを自慢していなかったのと同じで私も大々的に発表していません。優秀な監督というのは、会長の責任の重大さを理解してアドバイスを受け入れるようにするのです。監督にとって、会長の支持は大事ですしね」

エレーラは本当に“魔術師”だったのでしょうか? どういう面でモウリーニョは彼に似ているのでしょうか?

「エレーラとモウリーニョの大きな共通点は、強い個性の持ち主であることだけではなくて、ものすごく仕事熱心だという点なのです。パソコンなんて存在しない時代で、エレーラは世界のサッカーをすべて知り尽くしていました。ラジオが中心で、ほんの少しのテレビ放送しかなかった時代だったにも関わらずにね」

モウリーニョがインテルであれだけの功績を残せた理由は?

「違いを示したのは彼の強い個性と今言った通りに仕事熱心であること、サッカーに関する知識、他人を理解する能力、適切な権威、選手たちの心を引きつける力を持っていることですね。本当に謙虚に仕事に打ち込む人なのです。彼と最初にコンタクトを取った時は、マンチーニが辞めると言っていたので、とりあえず打診を入れただけだったのです。でも、その日からモウリーニョはインテルについて勉強し始めて、彼を監督に招くと言う決断を下す以前にインテルに関することを何もかも知り尽くしていたのですよ」

この長年でモラッティ会長が最も愛した選手はロナウドですか? 最も鮮明に残っている記憶は?

「彼がピッチで見せた素晴らしいプレーは誰もが覚えていますが、私はローマで膝を故障した時が印象に残っています。彼はいつだってチームの空気と私の心境を瞬間的に読み取れる、とてもクレバーな選手でした。ロナウドは確かに最も印象に残っている選手ですね」

レオ・メッシの獲得を試したというのは本当ですか? マスコミが大袈裟に書き立てただけですか、それとも本当に獲得までかなり近づいていたのでしょうか?

「近い、と言えるまでは行きませんでした。彼がまだバルセロナでデビューしていない時で、Uー20かUー18の試合で彼のプレーを見て、情報を集めたのです。バルセロナは彼の成長の面倒、彼の健康に関するケアもしていたので、そこに割り込むのはあまり良いことではないな、と思ったのです。メッシの父親は他のクラブから打診があったということをバルセロナの幹部に報告して、それで契約が結ばれてメッシのバルサでのキャリアがスタートしたのです」

サネッティを獲得した当時、オルテガを獲る寸前だったというのは本当ですか?

「いいえ、オルテガを獲得するつもりはありませんでしたよ。オルテガのプレー集ビデオを送られてきたというのは事実ですが、私はむしろサネッティに強い印象を受けていたのです。何か特別なものを持った選手に見えたんですよね。でも、これだけのキャリアを築くだろうとは想像していませんでした。これだけコンスタントにプレーするような選手になるとは思っていませんでしたよ」

ユヴェントス、というチーム名を耳にして真っ先に思い浮かぶイメージや出来事は何ですか? あなたがサッカーを離れようと思ったのはカルチョスキャンダルの影響もあるのでしょうか?

「現時点ではユヴェントスと良好の関係がありますし、アニェッリ一族とは以前から最高の関係ですよ。クラブに携わったある人物たちの影響でこの関係が悪化したと言いましょうか。いずれにせよ、インテルとユーヴェの間にライバル意識があるのは周知の事実です。何はともあれ、私のサッカー業から離れるという決断とは無関係ですよ。単に、18年間オーナーを務めた末、クラブを手放す時がやってきたと感じただけです」

ミランのベルルスコーニ会長との関係は?

「そう頻繁に会うとかの関係ではありませんね。何回か連絡を取り合ったことはありますが、彼はいつだって私に対して親切でフレンドリーでしたよ。同じ町の2クラブの先頭に立って、お互い相手チームより良い結果を出したいというところが大きな共通点でしたからね」

あなたがアルバロ・レコ―バを好きだった理由を説明していただけますか? 他の人には分からなかった何かがあなたには見えたのでしょうか?

「彼の魅力の虜になってしまってたんでしょうね...(笑)。私が思うには、彼は天才でした。正直言って、我々が獲得した中で最も偉大な選手だったのです」

インテルを売却するというのは、心の一部を譲るようなことだったはずです。トヒル氏のどういう面が気に入ったのでしょうか?

「まず何よりも、強い意志と情熱を見せてくれたことが気に入りました。それに、あらゆる面で最高の人なのです。慎ましくて、敬意の心を持った人ですね」

トヒル氏は会長に就任してすぐにブンデスリーガを参考にすることや、若手に賭けるなどの積極的な方針を示しました。インテルが再びスケールの大きい考え方を持つ時代が訪れるのでしょうか?

「我々は誰もスケールの大きい考えを諦めたわけではないですよ。途中で不具合があったとしても、何か新しいことをやろうとしているからこそ生じるものなのです。現時点で、トヒル氏は特定のプロジェクトを実行するためのツールを持っているわけです。彼は良い結果を得るための能力、忍耐力と注意力を持った人です。トヒル氏も仕事熱心な男ですし、彼の仕事に尽くす姿勢に期待を感じています」


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