[ミラノ] 12日夜、ハビエル・サネッティは国営放送RAIUNOのニュース番組TG1に出演し、“Giocare da uomo”(人間らしくプレー)という題名が付けられた自伝本の出版を発表した。ニュースキャスターのマルコ・フランゼッリの質問に答えながら、キャプテンはこれまでのキャリアを振り返ると共に今後のことについても語った。
サネッティの一問一答は下記の通り。
サネッティさん、“人間らしくプレーする”とはどういう意味なのでしょうか?
「何よりも、しっかりとした価値観を持って誠実にプレーするということです。観ている人に何か大事なものを与えようという気持ちを込めてね」
アンドレ・アガシは自伝で、結局テニスというスポーツを憎むことになったと告白していますが、あなたはサッカーに対する愛を描いています。違いはどこにあるのでしょう?
「僕はサッカーを愛してます。昔から、大好きなのでね。この本には、僕の歩みがすべて語られています。無邪気にボールを追いかけていた頃の心境から、高いレベルへたどり着くまで積み重ねた努力の数々まで、何もかも書いてあるのです」
色々と犠牲を払ってきた中で、最も役に立ったことは?
「子供の頃、親のアドバイスに従ったことですね。まず勉強して、それから好きなことをやって、自分の夢を追い続ける。そのおかげでここまでやって来られたのです。でも、それは犠牲を払ったとは言えませんね。ただ、自分のためになることをやっただけですから」
あなたはお父さんと一緒に左官の仕事も経験しています。それはそれで役に立ったのでしょうか?
「何よりも、人生を理解することに役立ちました。父親の傍らで働いて彼がいかに苦況に耐えるかを目にすることは、それからの僕の人生で起きたことのすべてに感謝の気持ちを感じるようにしてくれました」
1995年には、インテルから声がかかったんですよね。
「最初は信じることができませんでしたね。アルゼンチンでまだやり始めたばかりで、イタリアサッカーなんてものすごく遠い存在にしか思えなかったのです。セリエAのような舞台でプレーすることは大きなチャレンジでした。インテルみたいなビッグクラブで自分の未来を築ける最高のチャンスだったので、僕は迷わずにイタリアに来ましたよ。ミラノに着いたらファンに声援を送られて、マッシモ・モラッティ会長と会って、入団発表イベントではベルゴミとファッケッティに歓迎されて…。新しい人生が始まったんだ、と実感しましたよ」
あなたとインテルは20年もの付き合いですが、まるで難局を知らない“結婚生活”のようです。その秘訣は?
「無限のラブストーリーです。これはいつまでも変わらないでしょう。初日から大きな愛情を示してくれたモラッティ一族とファンには、いつまでも感謝してますよ。インテルは僕にとって、心から愛する第二の家族なのです」
インテルへの愛が芽生えたのは?
「僕らは大きなファミリーなんですよ。良い時も、悪い時もね。みんなが期待しているトロフィーが獲得できなかった時期だって、僕らは威厳を保って進み続けたのです。その結果、タイトルもやって来たのです」
あなたの伝記には『サッカーの最も良い部分は選手である』と書いてあります。本当にそうなのでしょうか?
「そうですよ。僕らは何度もミスを犯すことはあっても、ピッチで良い結果を出したいという誠実な心と威厳が常にあるのです」
これまでの監督についてコメントを一言いただければと思います。ロベルト・マンチーニから始めましょうか…
「彼の下で僕らの勝利のサイクルが始まったのです。偉大な仕事をやり遂げた監督ですね」
マルコ・タルデッリについては?
「彼の下でのシーズンは厳しかったです。ダービーを0ー6で落として、何かが壊れたのです」
自伝には、監督としてタルデッリが一番悪かったと書いてありますが…
「本当に一番悪かったかどうかは定かではないけど、個人的には一番フィーリングが合わない監督でした」
では、マルチェッロ・リッピは?
「クラブは彼に偉大なチームを作り上げるためのすべての要素を与えたけど、残念ながらそれは実現しなかった。すべて彼が悪かったということではないですよ。とにかく非常に複雑なシーズンだったのでね」
レッジョ・カラーブリアでの『蹴り』の件については?(注:リッピは会長が選手陣に蹴りを入れるべきだと発言した)
「あれには腹が立ちましたね。チームに対して失礼な姿勢だったと思いますよ。誰だってミスは犯すものですけど、方向性を訂正するべきだと言うにしても他に言い方があったはずです」
エクトル・クーペルについては。
「ああいう形でインテルとの関係が終わってしまったのは本当にすごく残念です。非常に真面目な人で優秀な監督でした。5月5日の結果が致命的だったのです」
アンドレア・アニェッリはイタリアサッカーの低迷を指摘して、優れた選手たちは他国のリーグでプレーしていると発言しました。この意見には賛成ですか?
「確かに時代は変わりましたね。前はカンピオーネたちはみんなイタリアに来たがっていたのに、今は状況が違います。でも僕は、セリエAは今でも最も難しいリーグだし、それなりの魅力があると思ってますよ。このレベルを保つようにしないといけないですね」
自分のキャリアを採点するとしたら?本では7.5点を自ら与えていますが。
「現に充実したキャリアだったと思うし、色々なことがあった中でこのチームカラーのために闘い続けたわけだしね。キャプテンマークを巻くという光栄に恵まれて、様々な夢が叶ったのです。支えてくれたすべての人々にお礼を言わないとね」
ヴァルテル・マッザーリ監督率いるインテルのここまでの出来を採点するとしたら?
「7.5〜8点です。はっきりとした考えを持つ優秀な監督を迎えて、チームの新しい歩みが始まったのです。この調子で続ければ、インテルは主役の座を取り戻すことができるでしょう」
スクデットを狙えるインテルですか?
「それを言うのはまだ早いですね。でも、最後までコンスタントなパフォーマンスを見せるようにしないといけないのは事実です。最高の目標を狙うための前提はあるので」
ヴァルテル・マッザーリ監督は誰に似ていると言えますか?
「仕事熱心なところや、試合に対する情熱なんかは少しクーペルに似てます。細かいところを配慮する監督で、練習はハードだけど、試合でその成果がしっかり出ているのでね」
チェーザレ・プランデッリ代表監督は、イタリアの若手選手は精神力に欠けているため苦戦すると言いました。あなたも同じ意見ですか?
「場合によってはそういうケースもありますね。サッカーの分野では努力が大事なので。僕が思うには、ビッグクラブに入団する若手というのは、しっかりとした心の準備が必要です。ミスを犯すことも覚悟して、成長していくのです」
マッシミリアーノ・アッレグリ監督は、サッカー選手とは(若者の)手本であるべきで、トサカやピアスは必要ないと言いましたが。
「同感です。僕らに憧れている子供たちがたくさんいることを理解して、その子たちにとって良い手本となるイメージを常に持つことが重要なのです」
あなたの本には、マリオ・バロテッリは“良い選手”と“真のカンピオーネ”の狭間を行き来していると書いてあります。
「彼は安定感を必要としていると思うので、いつかそれを見出せることを願っていますよ。マリオはずば抜けた才能の持ち主だけど、もっと落ち着いて自分にできることをやるべきなのです。彼とは何回も話しました。話は聞き入れるんですけど、それでも過ちを犯し続ける若者のタイプなんですよね。間違いを本当に理解して初めて、成長が始まるのです」
あなたはバロテッリのことを“サッカーのジャズ・プレーヤー”と呼んでいますが、彼が即興的なプレーを見せるからですよね。それは良いことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか?
「確実に良いことです。どんな局面でも、決定的となるプレーを即興でやって見せる選手ですからね。ミランはともかく、イタリア代表にとって貴重な存在でしょう。ワールドカップも近づいているわけだし」
彼がインテルのユニフォームを地面に投げ出した時は、立腹しましたか?
「ええ、やってはいけないことなのでね。でも、あの時は彼もいけないことをやってしまったとすぐに反省したみたいですよ。その場では、いちいち説明している時間がなかったので、僕は何も言いませんでした。本人がロッカールームで謝罪して、そこでとりあえず一件落着となったのです」
ジョゼ・モウリーニョは他の監督に比べて何が違うのでしょうか?
「モウリーニョは強い個性を持った男であり、偉大な監督です。どんなに細かいことにも念入りに気を配る、勝者の魂を持った指揮官です。彼の下での2シーズンは、すべてのインテリスタの心の中にいつまでも残ることでしょう」
何かエピソードは?
「その後、インテルが優勝する展開となったチャンピオンズリーグの(グループリーグ)キエフ戦では、ハーフタイムの時点で僕らは0ー1で負けていて、そのままではもう敗退する流れだったのです。そこをモウリーニョは、イチかバチかの勝負に出ようとロッカールームで言ったのです。現に、DF2人を下げてFW2人を投入して、僕らは逆転勝利を手にしたわけですけど、あのハーフタイムでのモウリーニョの言葉にはものすごい信念が感じられたのです。ピッチに戻った僕らは、本当に逆転が可能であると信じてましたからね」
ルディ・ガルシア監督はジョゼ・モウリーニョに似ているのでしょうか?
「直接知らないので何とも言えないです。優秀な監督であることは確かですよね」
ローマが首位を独走していることに驚きはありますか?
「いいや。優れた選手がいて、コンスタントな結果を出せる組織力を誇るチームです。1位に値するチームですよ」
フランチェスコ・トッティはあなたが負傷した時、『ローマ対インテル戦で必ず会おう』とツイートしました。
「そうなることを願ってますよ。フランチェスコは本当に最高の男だし、今の好調は喜ばしいですね。先日のインテル対ローマ戦のキックオフ前に挨拶して、調子はどうかって聞いてくれました。彼は僕がケガをした時、すぐに連絡をくれた人のひとりですからね。彼が応援してくれているというのは嬉しかったです」
あなたやトッティみたいに選手生命が長いアスリートの秘訣は?
「このスポーツに対する情熱と、クラブとチームメートに貢献したいという気持ちですね」
2010年のワールドカップは、当時代表監督だったディエゴ・マラドーナから招集されずに終わりましたが、あれはどれだけ悔しかったのでしょうか?
「厳しかったです。最後のフレンドリーマッチ2試合まで常に貢献していたので、招集に値していたと思いますよ。でも、これがサッカーなので、恨みとかはないです。僕としてはやるべきことはすべてやったんだし、後は自分で決められることではなかったので。アルゼンチン代表は僕の中でいつまでも大切な存在ですよ。大いなるプライドを持って、母国のチームカラーのために何回も何回も闘ったのです。子供の頃は一回でいいからアルゼンチンの試合に出ることが夢でした。それを、140以上の代表試合に出場したわけですからね」
マッシモ・モラッティがインテルの会長でなくなる可能性がありますが、そうなったらあなたとして寂しいのではないでしょうか?
「例え会長を辞めたとしても、彼はインテルを象徴する存在であり続けると思います。なぜなら、彼とその家族はこのチームに大いなる愛情を注いで、彼は彼の父親と同じようにこのクラブのために尽くしたからです。モラッティ会長はこのチームカラーに対して信じられない情熱を抱いているし、僕は彼と深い絆を感じてます」
でも、サッカーの世界も変わってきています。マッシモ・モラッティは『情熱』を象徴する人物ですが、今のサッカーは何よりも『ビジネス』ですから。
「時代が変わったのです。生き残るためには、辛くてもこういった決断が必要なのです。それによって、サッカークラブが存在し続けるわけですしね」
インテルにも言えることです。
「確かに。でも、インテルは大きなファミリーなのです。モラッティ一族のおかげでね」
チャンピオンズリーグ優勝の夜、あなたはビッグイヤーに話しかけたそうですが?
「祝福の騒ぎが終わった後、カップをロッカールームの床に置いて、こう言ったのです。『ずっと前から君を追いかけてきたんだ。抱きつかせてくれ!』ってね。非常に感動的な瞬間でしたよ。あの夜はウォームアップの段階から感動してました。ピッチに出て、インテルファンで満員のゴール裏スタンドを目にした時は息を呑みました。試合終盤にロスタイムが提示された時、サムエルと目が合って、2人とも感動のあまり泣き始めたんですよ。サムエルはでも、まだロスタイム3分があるから油断してはいけない、と言ってましたね。まあ、あの時点で2ー0で勝っていたので、最悪の場合でも1点奪い返されて2ー1になるくらいのことだったでしょうけど。夜中にイタリアに戻って、明け方6時に満員のサン・シーロにビッグイヤーを引っさげて行ったのも感動的でした。キャプテンとして、ファンにあの素晴らしい喜びをプレゼントしたのは一生忘れられないことです」
クラブワールドカップでは、トロフィーをピッチのコーナーに置く場面がありましね。
「いつもやることですよ。あの夜も大きな喜びを味わいました。たくさんのファンと、僕の家族もいたしね。あの数日前にサムエルがケガをしていたので、僕は彼に捧ぐTシャツを着て授賞セレモニーに出ました。ほら、サムエルもここにいるよ、という意味だったのです」
あなたは信仰心が深いと聞きますが。
「ええ、家族全員でカトリック信者です」
フランチェスコ法王と対面したことについて話をしてくれますか?
「同国人が法王になったというのが最初の大きな感動でしたね。モラッティ会長から電話があって、有頂天になっていたことを覚えてます。フランチェスコ法王は本当に素朴な人ですよ。対面した時は世界が抱える問題から始まって、様々なテーマについて話し合いました。素晴らしい経験でした。それに、彼は(アルゼンチンのサッカークラブ)サン・ロレンソのファンだし、色々なスポーツグッズを贈られているからそのうち博物館ができるんじゃないかな?もちろん、僕のユニフォームもその中に入っていますよ」
あなたは複数のニックネームがあるみたいですが、一番のお気に入りは?
「やっぱり“PUPI/プーピ”です。みんなからそう呼ばれているし、僕の(チャリティー)財団の名前でもあるしね」
自分の人生を大きく変えたと思う決断は?
「イタリアに来るという決断は、確かに僕の人生を変えました」
偉大な男の背後には必ず偉大な女性がいると言われます。あなたの場合もそうですか?
「僕にも言えることですよ。(妻の)パウラがいなかったら、これまでやり遂げてきたことを実現できていたかどうか、分からないですね」
これまでの人生で最も大きな間違いは?
「たくさん犯したけど、ミスに気がつけば成長できるものですよ」
好きな歌は?
「エロス・ラマッツォッティの“Più bella cosa non c'è”(これ以上素晴らしいことはない)ですね。歌詞の『存在してくれてありがとう』というフレーズは、僕がインテルに捧げたい言葉です」
ピッチ復帰はいつですか?
「早く復帰できることが願いです。長い長いリハビリもあと少しで終わりだし、もうちょっとだけ、といった感じです」
復帰したら複数の試合に出るつもりですよね?
「そうであることが願いです」
その後は、監督ですか?
「いや、クラブフロントをやりたいと思っています。インテル関連の役職で、“人間らしく”フロントをやりたいですね」
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