[アッピアーノ・ジェンティーレ] 昨日のスポンサーワークショップに飛び入り参加したマッシモ・モラッティ会長は、正式なスピーチを用意していなかったものの、"アンジェロ・モラッティ"センターのコンファレンスルームに集まったFCインテルナツィオナーレの数々のビジネスパートナーや各種スポンサーへ向かい、次のように話しかけた。
「お邪魔してすみません。私の出席は予定されていなかったので、 問題にならないことが願いですが………(笑)。皆さんに対する感謝の気持ちを表したくて来ました。こうして皆さんにお会いするのは本当に嬉しいことですし、こういった時期でもインテルを支えてくれることに大変感謝しています。私に言わせていただけるなら、皆さんの選択は正しいですよ。スポンサーとしてビジネスの選択肢は他にも散々あると思いますが、それでもインテルに投資することを選ぶというのは、私がやっているのと同じことですから。私はもう何年もこのクラブに投資し続けていますが、誰かに『いい加減、飽きたんじゃないか?』と言われてもおかしくありません。でも、私はインテルを信じているのです。経済面だけのことではないですよ。ビジネスとしてもそのうち、しっかりと成り立つようになるだろうと確信しています。その意味では、手本とされる企業に成長するだろうと思っています。でも、私は何よりもこの投資対象が好きだからやっているのです。皆さんの情熱、特にインテリスタの方々の情熱がありますし、素晴らしい事業を手掛けているんだな、と実感しています。しかも、その情熱の対象となっているのは、ほかに類のないものなのです。我々も、一層と他にないようなものを作り上げようとしてきていますが、ファンがその違いを感じてくれて大いなる情熱と愛情を示してくれていることは本当に素晴らしいと思います。スポーツ面での勝利があり、こういった感情面での素晴らしい充実感があり、それが私や皆さんに大きな喜びをもたらしているのです」
「我がクラブの生産物と呼べるのはサッカーをやって、良いプレーを見せて勝つことです。ただ、それ以外に価値観があって、その価値観というものをクラブを通じて主張していくのも大事なことなのです。我々はその辺もがんばって続けていきたいと思います。中には、頑固者に思われても仕方ないようなこともあります。例えば、我々はどうしてもギャンブリングの広告を受け入れるクラブとは共感できないのです。もちろん、他クラブをリスペクトしていますが、これはレアル・マドリーだって、ユヴェントスだってやっていることですし、以前はミランもやっていました。すべてのクラブが問題を感じずにやることです。決して悪いことではありません。ただ、我々はやりません。我々が、私がこのクラブにいるまで、インテルは独自の主義を保つようにしたいです。こうして、インテルは他とは違う道を選んできて、勇敢とされたり、クレイジーとされたりするのです。ファンにしても、インテリスタは他のクラブのファンとは違うのです」
「インテリスタは、インテルが変わっているからこそ好きなのです。チームが負けるときも、インテリスタ魂は揺るがないのです。私はこのクラブの会長を務めることを誇りに感じています。恵まれていることだと思うと同時に、このクラブの行方に対する責任も大きく感じています。監督の人選に関してもそうです。新聞には私が勇気を必要とする決断を取ったと書いてありましたが、正直言って、勇気なんて関係ありません。単にストラマッチョーニがこの役割を果たすための能力を持っていると判断しただけで、そう思う人材を監督に就任させて何が勇気いる決断なのか分かりませんね。でも、プリマヴェーラ出身の若い監督にトップチームを任せたことは、全体的に大胆な選択として見られたみたいです。幸いなことに、人間としての良さに関して私の評価に間違いはなかったと断言できます。彼は見事、重大な責任を受け持って見せてくれたのです」
「ストラマッチョーニの人選は新しい方向性の表れと言えますが、クラブのポリシーは若返りを図ってより強力な勢いを得ることです。そのため、チームを根本から作り直していくわけですが、つい最近までの過去の象徴である者に対する感謝の心と友情を忘れないことが大切です。ここ数年間の栄光は現在の我々の力になるべきですから、常に手元に置いておきたいのです。とは言え、方向転換のときがやってきたとも感じました。この転換とはピッチだけではなく、クラブの経営面でも行うものです。新しい方向へ進まなくてはいけない時代です。世の中の経済状況がどうなのか、私がここで述べる必要はないでしょう。今日ここにいらっしゃる方々にしても、例外の幸運なケースもあるかどうか分かりませんが、各会社内で今までになかったほどの苦況に直面していることと思います」
「今はこの不況がすべてのことに影響を与えていますが、ポジティブな面も見るようにするべきだと思います。ポジティブな面なんてあるのかって? 例えば、みんな前よりも働きますよね。ほんのわずかのものを得るためにも、誰もが倍の仕事の量をこなさなくてはいけないようになりましたが、これは人生に役立つ最高のトレーニングになります。裕福で平安すぎる生活にはまって鈍ってしまうことなく、活発に動いているのは良いことです。あと、想像力の活性化もポジティブなことですね。一生取り引きが続くだろうと思っていた顧客が、いきなりいなくなってしまったケースなんて大いにあることでしょう。クライアントも不況なのでそうなってしまうのです。すべての分野でそうですよ。インテルだって、そういう現象がいつ起きてもおかしくないのです。そこでみんなが思いついたことは、新規のクライアント、新しい市場を探すことです。世の中はグローバル化されたと言われますが、現に全世界が繋がっているのです。勇気を持って外に出てみれば、どこにでも行けることが分かるのです。我々は例えば、インドネシアに行ってみました。すでに結果が出てきているケースと言えば、中国ですね。もっと近い国に行くこともできたでしょうが、我々は東洋に行って、どれだけインテルの知名度が高いのかを体験することができたのです。スポンサーの皆さんの会社にしてもそういうことがあるかも知れないですよ。それまではまったくマークしていなかった遠い国が新しい市場になることだってあるのです。我々は新しい可能性が見えたことによって、思いっきりの想像力と集中、そして決断力を持って前向きに臨みました。楽観的になるための要素は特になくても、とにかく前向きな姿勢を持つようにすることが重要なのです」
「インテルを信じる大勢の人たちに支えられていることは、私の力になっています。そのおかげでチームが結果を出せていることによって、我がクラブはイタリアだけではなくて世界中で注目されているのです。特に外国では、インテルは非常に団結したクラブ、 プロジェクト性に優れたクラブというイメージが強いですね。我々のやる気、常に向上したい強い気持ちというのが国境を超えて伝わっているのです。外国進出は必ず成功するかって? そうであると願っています。リスクはあるかって? 非常にありますね。なぜなら、未知の市場に挑むからです。現地の文化を知らないだけに、反応やタイミングがよく分からないというのがあります。でも、忍耐力と勇気を持って臨んでいくしかないのです。インテルの人間は、学習能力に優れていますしね(笑)。いずれにせよ、我々にとって勉強になる経験であることは間違いないのですから」
「このように国際的な状況が出来上がってくると、皆さんにとってもインテルを通じて新しい市場が開けるということになるわけです。スポンサー各社はイタリアで商売するだけでなく、外国でのビジネスチャンスが増えれば嬉しいはずですよね。その意味で、インテルは国際マーケットプレースみたいなものとなって、外国との貿易がプロモーションされるだけでなく、意見や情報、ノウハウの交換なども可能となるわけです。みんなで力を合わせて賢くやれば、想像以上の結果を得ることができると思うのです」
「最後に、スポーツ面に触れさせていただきますと、私は有能な若い人材に期待を抱くことに喜びを感じます。と同時に、インテルの歴史に名を刻んだ人材を信頼し続け、ピッチだけではなくクラブレベルでも貢献できると知ることも嬉しいです。私も、ファンも、この男たちに大いなる信頼を寄せているのです。長くなりましたが、あくまでもあらかじめ準備していたスピーチではありませんでしたので悪しからず。今のこの時期に、私が感じていること、思っていることを皆さんに伝えるチャンスがあって何よりもです」
広報部